



マルチタスクの弊害
マルチタスクとは
マルチタスクとは、複数のタスク(作業)を並行して同時に行うことを意味します。例えば、メールが来たらそれをチェックして途中まで返信を書いて、ちょっと考えていたら電話が来たので対応。そして、ふと思い出したので昨日やりかけていたサイトの修正作業をし、と思うと、同僚からこないだの納品書どうなった?なんて聞かれて口頭で答える・・・そういった行為をマルチタスクといいます。
これは、シングルタスク、つまり1つずつ作業を完遂していくやり方とは対極にあるものです。
マルチタスクができる人は存在しない
今や携帯やPCでは当然のこととなっているマルチタスクですが、マルチタスクができる人という方は存在しません。
これを読んでいる方の中にも「自分はマルチタスクができる」と思っている方も存在すると思いますが、マルチタスクができる人は存在しないというのが学術的な常識となっています。
脳の仕組みの上でマルチタスクというものは存在せず、高速でシングルタスクを行き来しているだけというのが根拠です。
また、ユタ大学が携帯電話で通話しながら車の運転をするというテストを、「マルチタスクが得意」という方含め行った結果、1人もマルチタスクの方が効率良かったということはなかったそうです(つまり、車の運転→携帯の通話、と1つずつやったほうが全員短時間で終了した)。
マルチタスクの弊害
そして、マルチタスクを行うと様々な弊害があることが分かっています。
- 脳へ負担、ダメージ
- 短期記憶の低下
- 生産性40%低下(シングルタスクだと約2倍の効率ということです)
- ストレスの増加
- 不安感の増加
- 1日忙しくても何も仕事が終わっていない
- 目の前の対応に集中しないため信頼感の喪失
生産性が40%落ちたらもう勝てない
仕事の生産性が40%落ちるということは、ほとんど半分近くに効率が落ちているということを意味しています(60%になっているということなので)。
残業残業といっている方は、マルチタスクでなければ2倍近い速度で仕事が処理できたはずなのです。まずタスクをマルチ処理していないかを考えてみてください。
また、事業者であれば、従業員にマルチタスクを行わせるということで全体の生産性を半分近くに落としています。これで他社に勝つことはほぼ不可能でしょう。
脳へのダメージも怖い
また、脳へのダメージは怖いですね。年齢を重ねるとともに短期記憶の力が落ちていき、さらにマルチタスクができなくなるそうです。
「いまやろうと思ったこと、なんだったっけ・・・」
そう思うことはありませんでしょうか?もし思ったことがありましたら、長年のマルチタスクによって脳に損傷が行っているのかもしれません。
ただし、ガムを噛むとか、音楽を聞くといった、無意識に反復する行為や、脳の違う場所を使う行為であればマルチタスクでも大丈夫なようです。
シングルタスクのススメ
これらの弊害を避けるにはマルチタスクをやめるしかありません。すなわち、シングルタスクへの移行です。
シングルタスク例
では、どのような作業をマルチタスクからシングルタスクに移していくべきでしょうか。ここは無数にあると思いますが、僕がまず思いつくのは
- 電話
- メールの対応
- スマホのゲーム
等です。電話と、そして24時間やってくるスマホやPCの通知を無視する勇気です。
世の常識はむしろマルチタスク
しかし、世の中にはマルチタスクが溢れていますし、シングルタスクしかできない人間を「無能」と見る風潮すらあると思います。その中でのシングルタスク移行は勇気のいることでしょう。
しかし、マルチタスクの弊害を考えると今すぐに移行しなければ脳にダメージが残っていっています。ここには一刻の猶予もないでしょう。
なんとか、シングルタスクにできないのかを考える努力をすべきです。自分の脳は損傷し、会社は衰退へと向かうのですから。
できない理由を述べる人が最悪
この点、「電話とらなかったらやばいでしょ」で終わらせる人が一定数存在します。が、それは僕が思う最も仕事ができないタイプです。
バイアス(=思い込み)が強い人はそういう判断をすぐにしてしまうのですが、こういったタイプは何も変われません。20代前半と40代前半くらいでずっと同じことを言われてる人になりかねないでしょう。そうなるとわりと人生が詰みます。
そうではなく、「どうやったら電話を無視できるか」を考えるのです。ご注意を。

無意識にか意識的にかはわからないけれど、実際に、僕がみたシングルタスクに向けた取り組みをしている人たちの例をあげていきます。
シングルタスクに取り込む会社例
小規模システム開発会社
電話対応は予約制としている。まずチャットワークで電話の時間を決めてから対応というフローを頑なに守っている。
おそらく、全員がエンジニアで開発に取り組んでいるので、とくにマルチタスクができないのだと思われます。
けっこう大規模なウェブプロモーション会社
日中に電話対応を全くしない時間を作っている。従業員の一部だけを電話対応に充てて、「何時に折り返します」という返事だけをさせている。
人数が多い会社であればこれが可能。時間帯をずらして、誰かが一旦の対応をすることでシングルタスク化を可能としています。
外部対応のない事業ばかりを選択している
小規模の事業者の間は、客単価を落としてでも顧客サポートのない事業ばかりに絞り込んでいる。対応に負われる30万円のコンサルよりも、広告費だけが少しずつ入るYouTubeに絞る等。
客単価に目がくらみサポートサポートばかりのコンサルをやっている方はちょっと先がきつくなると思います。マルチタスクの弊害である「創造力がなくなる」を思い出してください。次の事業が出てこないのです。するとコンサルをするネタや知識も出てこなくなりますね。
コンサルをやらずにシングルタスクで処理できるものにするか、もしくはコンサル的なことをやるのであれば月100万円くらいもらって従業員を使って処理し、自分はシングルタスクのままでいる状態をなんとかつくることです(僕はそっちです)。
難しい作業を朝にやる
完遂することが大変な量が多かったり、多くの思考を要求されるものは午前中やってしまうという起業家さんがいました。
マルチタスクを避けるためにはシングルタスクにした1つ1つの作業がきちんと完遂されてなければなりません。いつまでたっても1つの作業でうーんと唸っていてはシングルタスクにした意味がなくなってしまいます。
人間は1日の中で午前中がもっとも脳の状態が良いそうです。それはそうかもですね。起きた直後なのですからまだ脳内に疲労物質が蓄積されていません。なので、そこで厳しいシングルタスクからやってしまおうということなのでしょう。
簡単に終わる作業から処理する
簡単に確実に終わるタスクから順番に処理するという起業家さんもいました。
これは、1つ前の例とは真逆ですね。しかし、簡単に終わる作業から処理をするということにも一定の合理性があります。簡単に終わるものからすると、外部からの問い合わせなどが減るのです。「あれどうなりました?」とか、そういった対応が減ることはシングルタスクへの移行を後押しすることは間違いないでしょう。
また、1つ1つ完了したタスクが積み上がっていくと脳のストレスが軽減されます。そのリズムで午後に難しいタスクに取り掛かるというのもありでしょう。僕は、こちらのスタイルです。簡単確実に終わる作業からやるタイプです。
(朝は脳が疲れていないので、次々とタスクが完了します)
メモをすぐにとれる体制を作っている
「ふっと浮かんだアイディアや解決方法などはすぐに処理しなければ消えていってしまう」のでついついマルチタスクをしてしまう・・・ということを避けるため、浮かんだものは必ずメモを取るようにしているという起業家さんがいました。
メモを取るということは僕も必ずやります。そのために、
- 瞬時に起動できる
- 後から簡単に見つけられる同じ場所に記載する
- 検索もしやすい書き方ルールも作っている
ということをやっています。ただちょっと多くの方と違うのは、そのメモを僕は手書きで書き写す作業もお昼ごはんとか、ちょっと時間があいたときとかにやっているところでしょう。手書き作業を一度いれることで、情報が格段に整理されますし、付随する新たなことが思い浮かびます。検索ができない手書きはほんとに意味がないという方がいますが、僕は大きく意味があると考えています。

シングルタスク化の例を見つけたら、その都度追記します。